パッケージツアー(パックツアー)を選ぶとき、「このホテルに泊まります!」を売りにしている場合をのぞき、「〇〇市内または近郊のホテル」としか書かれていないことも多く、ホテルの名前が分かるのは旅のしおりが届いたときです。どんなホテルなのかな?便利なところにあるのかな?きれいなのかな?と気になる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ヨーロッパ方面のパッケージツアーに10回以上参加した私がこれまで泊まったホテルの実例をご紹介します。いろんなホテルの個性や振れ幅を判断する一助にしてください。
お手頃ツアーのホテルは3つ星クラスが多い
ホテルのランクづけは国によって基準が異なりますが、フランスでは1つ星から5つ星まであり、さらに5つ星の中でも特別な数十軒だけに「パラス」という称号が与えられています。詳細な違いをここでは語りませんが、星の数と快適さは、だいたい比例します。星が増えれば設備も対応も整っていく。私の体感に基づけば、4つ星になると「格付けのために定められた基準を多く満たしているだけのことはあるホテル」であり、多くの人にとって快適で「いいホテルだな」と思えるゾーンです。
これまで目を皿のようにしてヨーロッパ方面のツアーを探してきた経験からすると、高くもなく激安でもないお手頃価格のパッケージツアーでは、特に「この都市ではいいホテルに泊まります」と書かれていない限り、イタリアやフランスではだいたいが3つ星クラスのホテルです。名指しで書かれていても、立地のよい3つ星クラスということもあります。
3つ星クラスは、困らない程度の標準的な設備が備えられてはいるものの、差が激しいという側面があります。同じ3つ星でも、体感としては4つ星に近い素敵なホテルもあれば、ちょっと残念だなと思ったホテルもありました。「すごく贅沢ではないけれどお手頃価格のツアーだからこれくらいのところに泊まれたら十分よね」と前向きな人なら感じられるゾーンです。
そこでここからは、私がツアーで実際に宿泊したホテルをピックアップして紹介します。同じ3つ星でもこれくらい違って個性があるという参考になればと思います。なお、星の条件は国によって違うので、同じ軸でご覧いただけるようフランスを多めに集めました。国が違うホテルのことはざっくりした感覚でお読みください。
ちなみに、冬に参加した中欧のツアーでは、物価の違いもあって、フランスやイタリアのツアーに比べるとコストパフォーマンスがよく、5つ星のホテルに泊まれたこともありました。
外階段しかなかったホテル
不便だったホテルを思い浮かべたときに真っ先に挙げたいのが、南仏をまわるツアーで泊まった、街はずれのホテルです。フランスでは2つ星から3つ星に分類されるチェーンでした。
低層の建物だったので、到着したときは「ホテル!?」と少し驚きました。それだけならこんなに印象深くはないのですが、なんとこのホテル、外廊下式でエレベーターがなく、部屋は建物の外にある階段をのぼる必要があったのです。私の記憶では、踊り場が折れ曲がっているような階段で、重いスーツケースを持ったままだったため途中でカラダの向きを変えられず、足が止まってしまいました。私でさえそうなのだから、一緒に参加していた母にも無理。結局、同じツアーに参加していた男性が下りてきて運んでくださり、ホテルから出発するときはバスの運転手さんが運んでくれました。旅行後のアンケートには「危険だ」と書きました。
部屋そのものは普通でした。郊外にあるので狭くはなく、特に汚くもなく、こういう造りの宿としてひどいとは思いませんでした。マイナスに感じたのは外階段だけです。
モンサンミッシェルが見えるホテル
モンサンミッシェルはフランスで人気の観光地のひとつです。北フランスをまわるツアーに参加したとき、モンサンミッシェルが見えるホテルに泊まると明記されていました。添乗員さんも「このツアーはモンサンミッシェルが見えるホテルに泊まります」と案内していたので、強力なセールスポイントのようです。
部屋のテラスに出ると、間近にではありませんが、モンサンミッシェルが本当に見えました。もちろん、ホテルの外に出てもちゃんとモンサンミッシェルが見えます。
私自身はこのホテルに心を動かされて申し込んだわけではありませんでしたが、あれだけ有名な場所なので、旅の記憶になる人は多そうです。「モンサンミッシェルに来るのを楽しみにしていた」という参加者さんも多かったので、売りとして書かれる理由は分かります。
このホテルも3つ星で、しかもエレベーターがありませんでした。同じ国の同じ3つ星で、片方は危険だとアンケートに書き、片方は眺めが売りとして成立していたことになりますね。
人気の観光地では、その近くに泊まれること自体がアピールポイントになります。裏を返せば、人気の場所に近ければ近いほど、ツアーの価格に反映されているということです。たとえばヴェネツィアは島の上に成り立つ街なので、物価が高いことで知られていて、宿泊費も飲食も他の都市より高くつきます。島内のホテルに泊まるツアーならそのことがしっかり謳われていますし、お手頃価格のツアーでは、ヴェネツィアに立ち寄るスケジュールでも島内に泊まらないことの方が多いでしょう。
立地抜群のフィレンツェのホテル
あるときのフィレンツェで泊まったホテルは、このホテルに泊まりますと明記されていました。とはいえ誰もが知っているような有名ホテルや高級ホテルというわけではありません。公式にはイタリアの3つ星です。売りになっていたのは、街の中心にあるという立地でした。このときはローマやフィレンツェで観光か自由行動かを選べるツアーに申し込んでおり、私は自由行動プランでした。
17世紀の建物を使っているというそのホテルは、こじんまりしたフロントで、朝食のレストランも小さく、部屋数は27しかない小さなお宿でした。インテリアはクラシカルなのですが、鮮やかな色が使われていました。日本の感覚だと派手すぎるような色でも、ヨーロッパで見るとシックでおしゃれに見えるのが不思議です。
ホテルの前は広場になっていて、有名な教会に面しています。ドゥオモにも歩いて行ける距離なので、買物エリアもすぐそこ。外出してはホテルに戻るを繰り返していたようで、街の写真と部屋の中での写真が交互に残っています。にぎやかな場所なので、夜に出歩いてもそれほど心細くなく、近所のお店に歩いて行って食事をしました。
私の体感では、このホテルは4つ星に近い3つ星ホテルでした。設備が飛び抜けていたわけではありませんが、建物に歴史とセンスを感じられ、立地も抜群。ホテルを出た瞬間からフィレンツェど真ん中の自由時間が始まるホテルは、お手頃価格のツアーでは価値が高いのです。
夜に着いて朝まで寝るだけのホテル
約1週間の旅の間には、ほぼ「ただ寝るだけ」のために宿泊するホテルもあります。わかりやすいのが、日本からの飛行機で深夜の時間帯に現地に到着した日。空港からバスでホテルへ移動して、その日はもう寝るだけです。もう真っ暗なので、周囲がどんな場所なのかもわかりません。深夜や早朝に着くと、ホテルの中のレストランも閉まっています。
こうしたホテルは、高速道路や幹線道路沿いの郊外にあることが多いです。夜遅くにホテルに入って寝るためのホテルとして手配されているので、正直、ときめきはありません。寝るだけならこれで十分という考え方もできます。翌朝にまた出発するのだから、部屋にいる時間を楽しむ余裕もないのです。
観光を終えてホテルへ入るのが夜になる場合は、深夜というわけではなく、まだ人々が活動している時間帯です。街の中心ではない郊外のホテルでも、近くにスーパーがあれば買物する楽しみも味わえます。私はホテルの周辺を事前に調べるときにスーパーの有無はチェックしますが、「近くにスーパーがあります」と案内してくれる添乗員さんもいます。地元のスーパーをぶらりと見て、水やちょっとしたお菓子を買えるチャンスです。
個性がないホテルや味気ないホテルの場合も多いのですが、これもツアーの一興といえます。
名前を見ると安心するチェーンホテル
日本にあるようなチェーンホテルは、海外にもあります。ビジネスホテルのようなランクのものから、それより設備の整ったところまでいろいろです。
フランスでよく見かけるメルキュールやイビスといったチェーンのホテルは、ツアーにもときどき組み込まれています。チェーンのホテルは数が多いので差はあるのかもしれませんが、それでも一定の品質は担保されていると思い、旅のしおりでこの名前を見つけると少し安心します。館内もきれいで整っている印象があります。
イビスで印象に残っているのは、朝食のパンです。決して高いホテルではないのに、冷えたパンではなく、バターの香る温かいパンが並んでいました。さすがフランスだなと思ったのを覚えています。
お手頃価格のツアーで泊まってきたホテルは、食事もそれほど豪華ではなく、朝食のメニューがシンプルでフレッシュなものが少ないと感じています。そんな中、焼きたてのパンが並んでいると、「このホテルは当たりだ!」とうれしくなってしまうのです。
実際のボリュームゾーンはこんな感じ
これまで挙げてきたのは、特に印象深いホテルです。実際に一番多かったのは、そのどちらでもないホテルでした。
部屋は狭めで、水回りは新しくありません。シャワーの水圧が心もとなかったり、洗面台の周りに物を置く場所がなかったりします。とりたてて汚いわけではなく、ヨーロッパらしいデザイン性や建物の個性もあるのですが、素敵!写真を撮りたい!というモードにはなりにくい雰囲気です。それでも、寝て、シャワーを浴びて、朝出発するには十分。一般的なパッケージツアーでは、部屋で過ごす時間はそんなに長くありません。
真冬のラッキーだったドイツの4つ星
お手頃価格のツアーで泊まった3つ星ランクのホテルを中心に紹介してきましたが、例外があります。
冬のドイツのツアーで泊まったホテルは、ツアーで使うホテルの中では朝食が群を抜いて豪華だったので、後から調べたら4つ星でした。街の中心部からは離れた場所にあって、会議やイベントの利用が多いタイプの大きなホテルです。都心の4つ星とは違う種類のホテルなので、その分だけ手が届きやすい価格だったのだろうと推測できます。しかも真冬でした。
このツアーは、私が参加してきた中でもかなり安めでしたし、ホテルのよさを売りにしていたわけでもありません。価格どおりのツアー内容であることのほうが多いのですが、時期や場所の条件が重なると、思いがけないラッキーが潜んでいることもあるようです。
参考:4つ星や5つ星との比較
ツアーで使われる3つ星のホテルよりもランクが上のホテルだとどう違うのかを見ていただくために、フランスの4つ星と5つ星をピックアップしました。どちらもツアーではなく、私が個人で手配して泊まったホテルです。
まずはわかりやすい例として5つ星のリッツです。改装される前に泊まりました。部屋が広く、水回りも整っていて、備品がとにかくたくさんある。アメニティは豪華で、ウェルカムスイーツまで置かれていました。しかもこれで下から2番目くらいのランクの部屋です。
次に4つ星のほうも紹介します。パリのリュクサンブール公園に近い、オデオン駅が最寄りのホテルです。一人で泊まったので、このホテルの中では狭めのベッドがひとつの部屋を選んでいます。ベッドが大きかった記憶があり、写真を見てもベッドの周りに大きなゆとりがあったわけではないことがわかります。
それでも、アメニティがエルメスでした。持って帰りたくなるようなアメニティが置かれているのは、やはり星の多いホテルならではだと思います。バスルームも広くてきれいでした。
部屋の広さで比較すると、3つ星はそれほど広くありません。私は個人手配で2つ星に泊まったこともあって、そのときはさすがに狭いと感じました。3つ星もゆったりしているとはいえず、それを一番実感するのは、二人で泊まって二人分のスーツケースを開けた状態で床に置けないときです。床の余った面積の合計では足りていたとしても、ベッドと壁の間のゆとりが少なく、「ここに置けそう」と思っても部屋のカドにベッドのカドが迫っていると置けなかったり。でも4つ星になるとそういうことは起きません。上に書いた「大きなゆとりがあったわけではない4つ星」でも、スーツケースを広げても困らないくらいのゆとりはありました。
お手頃価格のパッケージツアーで指定されているホテルではちょっと物足りない、せっかくだからもっと快適そうなホテルに泊まりたいという人は、この項で紹介したようなランクのホテルに泊まることを売りにしたツアーの検討をおすすめします。リッツのようなレベルになると、ホテルの名前そのものが売りになるので、パンフレットに名指しで書かれています。全泊ではなく最後の一泊か二泊だけを有名ホテルに泊まるというプランを見たこともあります。また、新婚旅行を意識したツアーは、宿が豪華な傾向です。
エアとホテルを組み合わせる自由なプランでも、たくさんのリストからホテルを選べます。ホテルにこだわりたい方は、パッケージツアーに比べるとちょっと割高になることも多いですが、そういう形で探してみてください。
ホテルの個性も違いもツアーの楽しみのうち!
いくつかのホテルの宿泊体験を紹介する中で、マイナスの思い出があるホテルも書きました。少し不安になった方がいるかもしれませんが、同じ3つ星というランクの中の振れ幅を示す極端な例として挙げていることをご理解ください。
考えてみれば、出張の多い方でもない限り、普段の暮らしでこんなにたくさんのホテルに泊まることはありません。短い期間の間に次々と違う宿に泊まり、部屋のドアを開けるたびに違う空間に出会える。「今日はこんなホテルなんだ~」とホテルの個性を味わい、ときには驚き、ツアーの楽しみにはそれも込みなのだと前向きに楽しむ気持ちがあれば、旅がより思い出深くなると思います。



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