発つ前に知っておきたい添乗員さんとガイドさんの違い

パッケージツアー(パックツアー)に参加すると、添乗員さんがずっとつきっきりで旅のお世話も観光案内もしてくれると思っている人もいますが、実際にはそうではなく、周遊型の旅の間にはいろいろなガイドさんが現れて案内してくれます。

今回は、添乗員さんとガイドさんの役割の違いについて実体験をもとにまとめてみます。この違いがわかっていると、ツアー中に誰へ何を聞けばいいのかがはっきりすると思います。

添乗員さんは旅程をサポートする人

数日以上の旅の間、朝から晩まで同じ時間を過ごす添乗員さんは、パッケージツアーの思い出として強く記憶に刻まれます。一緒に参加した母や友人とも「あのときの旅行はあんな添乗員さんだったね」という話に必ずなります。それくらい添乗員さんはパッケージツアーにとって大きな存在。頼るべきところは頼り、添乗員さんの業務でないことではできるだけ手を煩わせないように、事前に知っておくとよさそうなことをまとめてみました。

添乗員さんの仕事の中身

ツアーで旅をしていると、「あの史跡の説明をしてくれないんだね」「観光案内もしてくれるものだと思っていた」と参加者の人が話しているのを聞いたことがあります。

添乗員さんは、申し込んだ旅行会社の側の人です。雇用の形はさまざまだと思いますが、日本の旅行会社の基準と制度のもとで旅程を管理し、参加者をサポートする立場の人と考えるとわかりやすいでしょう。日本から一緒に出発して、旅の間ずっと同行し、日本に帰るまで一緒にいます。

仕事の中身は、旅程の管理です。集合時間の案内、ホテルのチェックイン手続き、バスの手配、食事の段取り、翌日の予定の説明。トラブルが起きたときに動いてくれるのも添乗員さんです。

観光案内は仕事に含まれていない

観光地や美術館の解説は添乗員さんの仕事ではありません。私がこれまで参加したヨーロッパのツアーでは、その土地の観光案内は現地ガイドさんが担当していました。添乗員さんが知っていることを雑談として話してくれることはありますが、たとえば有名な大聖堂の前に立っているときは、たいていその場にガイドさんがいます。そういう場面で説明するのは添乗員さんではなくガイドさんですし、参加者もガイドさんに質問します。添乗員さんが観光案内をしないのは、不親切だからではなく、そこは別の人(ガイドさん)の担当だからです。

添乗員さんとガイドさんの役割の違いが一番はっきり見えるのは、街を歩きながら観光しているときです。ガイドさんは先頭を歩き、周りの建物や街並みを指差したりしながら、歴史的な背景を説明します。添乗員さんはというと、多くの場合、列の一番後ろや中ほどにいます。遅れている人がいないか、はぐれかけている人がいないかを見ながら歩いています。あるいは、参加者からの(観光案内とは関係のない)質問に答えたりしています。同じ道を同じ速さで歩いていても、二人が見ているものは違います。それぞれの本来の役割が、そのまま立ち位置に出ているのです。

添乗員さんはハードワーク

私が今まで参加したツアーでは、添乗員さんの質に大きな差は感じませんでした。経験の多い少ないによる違いは多少感じるものの、困るほどのものではありませんでした。

添乗員という仕事は、実際そばで見ているとよく分かるのですが、旅程に必要なたくさんの書類を持ち歩き、朝は早くから動き、食事は参加者よりも短時間で済ませ、夜の解散後も参加者からいろいろな質問や相談を受けています。こんなハードワーク、好きでなければできないと思います。私が出会った添乗員さんは、皆さん親切で、ホスピタリティのある方々ばかりでした。

添乗員さんからは出発前に電話がある

主に出発に際しての案内や確認

添乗員さんとの接点は、出発空港からだと思われがちですが、実はもっと前から始まります。

添乗員同行ツアーの場合、多くの会社では、出発の数日前に添乗員さんご本人から電話があります。ご挨拶コールなどと呼ばれている連絡です。これは、添乗員さんからのご挨拶と業務上の連絡が主な内容です。地方空港から羽田や成田へ来る人には出発空港の確認をしたり、当日どこで何時に来てくださいと案内したりと、必要事項を伝えられます。

このとき、質問したいことがあれば聞いてみることも可能です。

添乗員さんは万能ではない

私は一度、現地の人が今どんな服装をしているか、コートは要るかブーツのほうがいいかなど具体的なことを添乗員さんに聞いたことがあります。返ってきたのは、はっきりしない答えでした。後から考えれば当然なのですが、その日の天候はその時にならないとわからないので、断言もしづらいでしょう。クレームにもなりかねないので、うかつなことは言えないと思うのも理解できます。また、添乗員さんは旅程の管理進行が仕事なので、その土地の専門家ではありません。インターネットで調べられることは調べておくのをおすすめします。

話しておくとよさそうなこと

防犯や両替については心配なら聞いておく価値はあると思います。スリの多い場所やよくある手口、日本で両替していくべきか現地に着いてからでいいかなどは、旅慣れていない人ほど気になるところだと思いますが、添乗員さんが日常的に案内していて、何度も質問されてきたことだと思います。

そして、身体のことや食事のことなど、伝えておきたい事情があれば、この電話で伝えておくのもよいかもしれません。ただ、添乗員さんが対応できるかどうかはわかりません。伝えたからといってすべてが叶うとは限らないので、期待しすぎないようにしましょう。

もし私が海外旅行初心者だったとしたら、添乗員さんからのご挨拶コールで何を言うかを考えてみました。それは、「海外旅行が初めてでよくわからないので」です。これを伝えることで、必要なケアの加減が伝わると思うからです。あるいは、「母が初めてで」なども言うかもしれません。また、初めてでなくても、現地でのオプショナルツアーなどを申し込んでいる場合は、伝えておくと思います。旅程中の動きにかかわるかもしれず、目配りしてくれるかもしれないためです。

添乗員さんが全都市に詳しいとは限らない

ヨーロッパのパッケージツアーの定番になっているローマやパリのような都市には、経験を積んだ添乗員さんなら一度ならず行っているとしても不思議ではありません。ただ、定番都市以外の小さな村や、たとえばアマルフィのように映画で一躍注目されてツアーに組み込まれるようになった街などは、添乗員さん自身が初めての場所ということもあり得ます。

それでも添乗員さんは自分から積極的に初めてだとは言いません。事前に地図で調べて、どこからどこへどう歩いてもらうかを確認したうえで、参加者に案内しています。土地に詳しいから誘導できるのではなく、旅程を成立させるための準備をしてきているのです。

自由時間の案内についても同じです。最終日のミラノで自由時間といったツアーのハイライトになる日は、ブランドショップでの買物もできるので、楽しみにしている参加者が多く、この日のために手づくりの地図を配ってくれる添乗員さんもいます。ここにこんな店がある、このレストランは安くておすすめといった書き込みが入っています。

ただ、これはすべての添乗員さんがすることではありません。それに、そういう地図をつくるからといって現地に詳しいのかというと、そうとも限らないようです。「すごい!お詳しいんですね」と言ったら、添乗員さん同士のネットワークで情報をやり取りしているという話を聞きました。

添乗員さんの専門は、観光案内ではなくあくまでも旅程のスムーズな進行です。

ガイドさんは観光案内の専門職

パッケージツアーといえば添乗員さんというイメージが強いのですが、道中にはもう一人の重要人物が存在します。それが現地ガイドさんです。

観光地や都市ごとに現れる

宮殿や美術館といった観光スポットの案内は、現地ガイドさんの仕事です。

多くの場合、ガイドさんはそれぞれの観光地でツアーに合流します。その都市の観光の間だけ名所の説明をして、終わると帰っていきます。短い間のお付き合いです。多くのガイドさんは現地に住んでいる日本人です。

余談ですが、私は冬のツアーでは、ヒートテックや靴に入れる小さなカイロを予備として多めに持っていくのですが、使わずに残ることも多いので、荷物を減らす意味もあって、最後にガイドさんにプレゼントしていました。母は母で、成田や羽田で買った小さな和菓子をガイドさんに渡していました。現地に長く住んでいる方にとっては懐かしい日本の味なので、よろこんでくれました。

いろんなガイドさんがいる

おもしろいことに、添乗員さんの質が安定しているのに対して、ガイドさんには当たり外れがあります。

素晴らしいガイドさんに当たると、旅の記憶が変わります。特に美術館の解説は差が出るところで、経験を積んだ方の案内は本当におもしろい。ただ絵の前を通り過ぎるのと、その絵が何を描いていて当時どう受け取られたのかを聞きながら見るのとでは、残るものがまったく違います。その記憶が濃く残っていて、ミラノで以前も案内していただいたことがある方に再会したときはすぐにわかりました。

反対に、そうでない方に当たることもあります。ドイツのクリスマスマーケットのツアーに参加したとき、バスで移動している最中に近くで交通事故が起きたのですが、そのガイドさんは「事故ってますね」とおもしろがるように笑っていました。観光地でトイレの場所を案内してくれたときも、実は場所を把握しておらず、間違っていたことがわかり、途中で引き返すことになって時間をずいぶん使いました。そのうえ「男子トイレも使っちゃってください」と言い出して、びっくりしました。私はそれはマナー違反だと思ったので、女子トイレの列に並びました。このトイレ案内の間違いのせいでそのスポットでの自由時間が減ったのは動かしがたい事実です。

もうひとつ知っておくとよいのは、ガイドさんが必ず日本人とは限らないことです。現地に住んでいる方で日本語ができる人が担当することもあります。日本語が流暢でない場合、特に絵画や建築の専門用語は聞き取りにくいことは実際に何度もあり、私はやはり日本人のガイドさんのほうがわかりやすい(聞き取りやすい)と感じています。

誰に何を聞けばいい?

わからないことや困ったことは添乗員さん

添乗員さんと現地ガイドさんの違いがわかっていると、ツアー中の動き方が少し変わります。

明日の集合時間、スーツケースをいつ外に出すのか、体調が悪いときにどうするか。こうしたことは添乗員さんに。旅程と生活に関わることは、添乗員さんに聞けば答えが返ってきます。自由時間に食事をするときのチップの心得、絵葉書の出し方、免税書類の書き方なども説明してくれます。

観光地の説明や質問はガイドさん

観光スポットの説明は、ガイドさんです。そして、観光案内が本業ではあるのですが、ガイドさんはその土地に住んでいる人でもあります。答える義務があるのかどうかはわかりませんが、観光客を案内する仕事をしている方なので、聞けば普通に答えてくれます。

ガイドさんは四六時中しゃべっているわけではなく、集合時刻の前や移動の途中は説明が小休止します。私は自由時間に手芸店を探すことがあるのですが、そういうタイミングを見計らってお店のことを聞くと具体的に教えてもらえたこともあります。また、自由時間を控えているときなら、美味しいお店を聞く人も多いし、ガイドさんからみんなに教えてくれるのも珍しくありません。

旅の時間をともに過ごす大切な存在

旅の時間を共に過ごす間に、添乗員さんは参加者にとって先生のような存在になっていきます。人気者だし、みんなに慕われます。何か小さなものを買ってお礼に渡している参加者もよく見かけました(義務ではありません)。

母はユーロに統一される前の旧通貨の小銭を持っていたのですが、それが今も一応使えると聞くと、添乗員さんに「もう使わないから」と渡していました。添乗員さんは「いいんですか」と言いながら受け取ってくれていました(2026年現在はイタリアのリラやフランスのフランは使えません)。

私は一度、旅行の終わりに添乗員さんから「お礼です」と小さなお菓子をいただいたことがあります。何か協力してくれて助かったというようなことを言われた気がします。

そういえば、自由時間に参加者数人と添乗員さんと一緒にごはんを食べたこともあります。添乗員さんの人生に質問が集中していました。

この記事で書いてきたように、添乗員さんもガイドさんも旅の時間を一緒に過ごす人たちです。役割は違いますが、どちらもいなければツアーは成り立ちません。誰が何をしてくれる人なのかがわかっていると、こちらの頼み方も変わります。困ったときに誰に声をかければいいか迷わずに済みます。

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