都市から都市へ、国から国へと主にバスに乗って移動し、日中の多くの時間を団体で観光するパッケージツアー(パックツアー)では、スーツケースに自由にさわれない時間が発生します。この事実を知り、スーツケースと手荷物にどのタイミングで何を入れておくかを設計するのが、旅行中の快適を左右します。今回は、パッケージツアー独特のスケジュールと荷物の関係、知っておくと役立つハンドリング術をご紹介します。
ツアー中のスーツケースの所在の基礎知識
パッケージツアーに初めて参加する場合、移動中や観光中にスーツケースをどこに置いておくのか、それが自分の行動にどうかかわるかを意識している人は少ないと思います。そこで、ツアー中のスーツケースがどこに置かれるかを整理してみました。
長距離の移動中はバスの荷物室
ホテルを出発して次の土地へ移動するときは、ホテルの前に停まっているバスにスーツケースを乗せます。運転手さんがサポートしてくれることが多いです。主にその日の夜、次のホテルに着くまで、スーツケースは施錠されたバスの荷物室の中で守られています。
これはパッケージツアーの大きな安心であり、荷物のことで一番ありがたいと思っています。個人で動くとなると、重いスーツケースを自分で転がして駅や街を歩きます。段差を上げ下ろしして、人混みを抜けて、電車やバスやタクシーに乗り、また降ろす。その間は両手がふさがっていて、動作の自由が奪われる中、スーツケースも手荷物も守らなければという意識がビシバシと働く緊張状態が続きます。
連泊中はホテルの部屋
ホテルに連泊する旅程のときは、スーツケースはバスの中ではなく、ホテルの部屋に置かれた状態になります。外出前にスーツケースにも部屋にもきちんとカギをかけるのが必須です。
また、ごくまれにですが、チェックインやチェックアウトのタイミングによっては、部屋からスーツケースを出し、ホテルのフロント横のスペースなどに参加者全員のスーツケースとともに保管することもあります。
持ってきているのに持っていない
上で説明したように、パッケージツアーの行程中のスーツケースは、守られている安心感と引き換えに、自由に開けられない時間が生まれます。
基本的に、バスで移動している最中は、荷物室にスーツケースがあったとしても、ホテルに着いてスーツケースを降ろすまで自由に開けられません。途中のトイレ休憩でも同じです。
スーツケースを部屋に置いたまま出かけるときも、同じような状況になります。街中のホテルに泊まっていて長い自由行動があるなら、スーツケースを開けたくなれば部屋に戻れますが、観光が終日予定されている日にはそれが叶いません。
旅行までに荷造りを済ませて、必要なものはスーツケースに全部入れた。そう思うと安心してしまいます。でも、バスに乗るとき、バスから降りて街を歩くとき、バスから降りて食事だけするとき、自由時間に行動するとき、それぞれのシチュエーションで必要になるものをスーツケースの中に入れたままだと、せっかく用意していても使えないままなのです。
実際、バスの中で「あ、スーツケースに入れたままだ!」という声を聞くことは珍しくありません。気づくのはたいていバスの中や観光地に着いて降りようとしているときです。
朝出かけてしまえば、スーツケースの中に入れたものを夜まで取り出せないのが原則。これを心に刻んで荷物を仕分けておくと、パッケージツアーの日中がぐんと過ごしやすくなります。
荷物を入れ子式に仕分けるという考え方
では荷物をどうやって仕分けていたのか、私の考え方や方法をご紹介します。
旅行の荷物は3種類
旅行に持って行く荷物はどれも大切な必需品ですが、大きく3種類に分けられると私は考えています。
A:肌身離さず持つ貴重品
財布やスマホやパスポートなどです。Aの携帯を忘れる人はあまりいません。いつも意識しているからです。人によっては同じものがAとBに入れ替わるものもあります。
たとえば私はパスポートは衣類の中に入れるほど肌身離さず携帯しており、次に優先度が高いのはウエットティッシュ。でもウエットティッシュがBの人もいるでしょうし、ペンや常備薬がAに該当する人もいるかもしれません。
B:日中の行動で必要になる日用品
帽子、折り畳み傘、サングラス、ショール。寒い時季は防寒用の帽子やマフラーなど。日中の温度変化に備えて快適に過ごすためのグッズが中心です。私の場合は水筒やS字フックもここに該当します。
バスに乗るときに忘れがちなのはこのBです。朝の時点では思いつかないけれど日中に必要が生じることが多いからでしょうか。日差しの強い季節に帽子なしで歩けばカラダにこたえるし、降り出したときに傘がなければ濡れてしまいます。場合によっては快適さの問題では済まず、体調にも影響します。
Bにおける私の唯一の失敗は、カーディガンです。寒い時期ではなかったので油断していました。日本からの飛行機が現地の空港に着き、そのままスーツケースをバスに積んで走り出したら、車内が冷えていて、羽織るものを用意しておけばよかったと悔やみました。
屋外の気温は予報でわかるとはいえ、それでも一日の中での気温差が大きい時季もあるので、温度対策は不可欠です。さらに、バスや建物の中がどうなっているかまではわかりません。温度差が苦手な方や、冷えると体調を崩しやすい自覚のある方は、薄手の羽織るものかストールの用意をおすすめします。
C:夜や朝に使うおうち系アイテム
着替えの衣類やスキンケアなどがこれに当たります。バスの荷物室やホテルの部屋に置いたままでも、普通の日中なら思い出さないようなものです。スーツケースは移動するクローゼットでありドレッサーだと思えばわかりやすいですよね。
バスにはAを入れたBを持参
では手元に何をどう持つかですが、私の場合はAとBを入れ子にしていました。下図をご覧ください。

スーツケースのほかに用意するのはバッグ2種類。ななめ掛けの小さなポシェットにAを入れ、ナイロン製の軽いトートバッグにBを入れます。BはビッグサイズでもないけどA4サイズは余裕で入るくらいで、ショルダーバッグとしても持てるものと決めています。
そして、Bの中にAを入れます。Aをななめ掛けにしてBを手に持つというスタイルでもかまいません。私はバッグは一つのほうが身軽に動けて好きなので、ホテル←→バスの乗降時はAをBに入れてまとめた形で持っていました。
まとめて持つくらいならなぜBひとつにしないのか?と思う人もいるかもしれません。実際、Aを兼ねたBとCのスーツケースだけで参加する人の方が多いです。そちらのほうが向いているという人は、Aを兼ねたBでの行動をおすすめします。
でもなぜ私はあえてA+Bなのか。それは、バスから降りて行動する時間の長さや行動の中身が同じとは限らないからです。
たとえば、2つの観光スポットを巡ってから昼食となると、3時間くらいはかかるでしょう。雨の予報が出ていたら折りたたみ傘を持って出たいし、肌寒いかもしれないからストールか羽織りものを・・・と考え、ならばBに入れて降りようと考えます。でも、トイレ休憩に立ち寄っただけのお土産物屋さんに入るときは小雨なら帽子でしのげばいいので、Aをななめ掛けして帽子をかぶってバスから降りられます。
自由行動のときも同じです。郊外のホテルに滞在していて終日ずっと外出なのか、街中のホテルに滞在していていつでも戻れるのか、さらにその日の天候という条件が加わると、必要な荷物が違ってきます。
私はとにかく両手を空けて行動したいし、余計なものは持たずに身軽でいたい。それが旅行中の安全につながると考えているので、つねに必要十分な荷物を携帯するために、A+Bを貫いています。

「スーツケースの予定」を意識する
このようなハンドリングの精度を高めるには、スーツケースの予定を把握しておくことが不可欠です。私たちのスケジュールは旅のしおりを見ればわかりますが、スーツケースの予定は書かれていません。
もっと具体的に書くと、朝にホテルを出発して夜に戻るというシンプルなスケジュールならともかく、午後の中途半端な時間にホテルを出発したり次のホテルに到着する日は、スーツケースをどこに置くのか、開ける機会があるのかが読み取れないのです。「ホテルに着けば開けられる」と考えがちなのですが、部屋には入らずロビーにある荷物置き場にスーツケースを預けてすぐ観光に出るという流れになることがあるからです。
日中の間に次の都市へ着く日などは、当日の朝食時までに「スーツケースがどういう状態になるか」を添乗員さんに聞いておくと、準備しておくものの読み違えが減るので安心です。
日中に到着する日はなぜ聞いておいたほうがよいのか、細かく説明します。観光に次ぐ観光で次の都市に入るのなら外出に備えたフル手荷物でよいのですが、午前中はバス移動のみ→午後に着いた次の都市で少し観光だと用意しておきたい手荷物を変えたい場合もあるからです。後者ならスーツケースを開けるタイミングがあるのかどうかがカギになります。
手荷物事情がカオスな最終日を制する方法
私たちは小さな頃から「明日の教科書は前の日に用意する」と教えられてきました。もちろん、旅の最終日の前夜までに整理整頓しておくのは当たり前です。でも最終日はそれでは済みません。最終日によく予定されている自由時間ではお買物が発生するし、空港での免税手続きで買った品を見せるために免税品を取り出しておく必要があるからです。
ホテルのチェックアウト、自由時間、再びスーツケースを手にするのはどこか。最終日の段取りはきちんと添乗員さんに聞きましょう。私は毎回けっこうしつこく聞いていました。ということは、事前に細かく案内しない添乗員さんもいるということです。
特に大事なのは、最後に空港へ向かうバスの荷物室にスーツケースを積む前に、以下を素早くすることです。
- 自由時間で増えた買物をさっとスーツケースに仕舞う
- 免税のために手荷物にする必要があるものを取り出す
- 機内で過ごすのに必要なものをまとめておいて取り出す
「忘れた!」「あれがない!」と慌てる人が出るのは、最後のホテルを出発した後が多いです。添乗員さんも繰り返し注意してくれますが、何度か目撃しました。ホテルから出てずいぶん経ってからバスの中で携帯電話を忘れたと気づいた人もいて、もう引き返すことはできず、後日ホテルから国際便で送ってもらうことになったと聞きました。
空港に着いてからスーツケースを広げて中身を入れ替えたり免税品を取り出す方も一定数います。特にルール違反ではありませんが、私は絶対にそれはしません。というのも、座席のリクエストをするために一刻も早くカウンターへタッチしたいからです。

そしてここで、私自身の失敗談を明かします。家の鍵をスーツケースの中に入れたまま、日本に着いてすぐに空港から自宅へ発送してしまったのです。鍵がないから家に入れないということに、空港から乗ったバスの中で気づいて大慌て。宅配会社に電話をして、かなり遅い時間にどこかでスーツケースをピックアップすることができましたが、疲れ果てました。スーツケースを空港から送ってしまえば身軽に帰れるという、便利なはずの習慣が裏目に出た形です。最終日は家の鍵を手荷物に入れておく。あれ以来、固く誓っています。
決められた旅程に従って移動を繰り返すパッケージツアーは、自分のスーツケースにいつでもさわれるわけではありません。その日の予定を見越したうえで荷物を仕分け、必要なものを過不足なく備えておきましょう。

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